いつかしぬ人が静かに梨を剥き いつかしぬ人が新聞を読んでいる 朝

見ないふりばかりが上手になっていく 靴音だけが響く廊下で

「死んでから三日は耳が聞こえる」なんて 誰も知らない優しさばかり

永遠にひらかぬ瞼をかすめゆく 「涙そうそう」は誰に届くか

もう生きていない もう生きていない人の足 わたしが見たのはたったそれだけ

目に見えるものの全てが遺品みたい 私が透明になっていく夜

心臓の音を辿ってここまで来たの 生きるってたぶん そういうことだ