2021-02-17 葬 短歌 いつかしぬ人が静かに梨を剥き いつかしぬ人が新聞を読んでいる 朝 見ないふりばかりが上手になっていく 靴音だけが響く廊下で 「死んでから三日は耳が聞こえる」なんて 誰も知らない優しさばかり 永遠にひらかぬ瞼をかすめゆく 「涙そうそう」は誰に届くか もう生きていない もう生きていない人の足 わたしが見たのはたったそれだけ 目に見えるものの全てが遺品みたい 私が透明になっていく夜 心臓の音を辿ってここまで来たの 生きるってたぶん そういうことだ