2021-02-17から1日間の記事一覧

LOG 1〜50

0001 うまく笑えない夏が来る 0002 天井が落ちてきそうな真夜中に 魚眼レンズで四隅を見ている 0003 どこまでも優しい世界がつらかった あの日のぼくにうたを届ける 0004 太陽になりたいと泣いた少年の ひまわり揺れる 背伸びする夏 0005 眠剤をお守りのよう…

最後まで 言えなかったあの言葉があって 次会う君はまっさらな君 はじめまして 出会ってくれてありがとう あの日の続きを言ってもいい? --- 一枚の絵画のようなあの瞬間(とき)が 忘れられないのだと異邦人は云う (ベディヴィエール) --- 輝きに眩んだままに…

2017.12

さよならの気配が詰まったこの部屋で 冷たい空気を胸いっぱい吸う 祖母の目に 綺麗な青があることを 介護ベッドの上に来て知る たましいがもういないってわかるのに 髪を撫でまだ話しかけてる 腰の辺りに 入れた絵の色が燃え付いて 緑に染まった骨を拾った …

雪女

白粉をおとしたような雪原に はだしのおんなのまぼろしをみる ぬくもりを一生知らないからだだから 雲の向こうの日輪を想う さむいけど あかるいから ねえ 私の顔を よく見て いのちが おわるときまで

いつかしぬ人が静かに梨を剥き いつかしぬ人が新聞を読んでいる 朝 見ないふりばかりが上手になっていく 靴音だけが響く廊下で 「死んでから三日は耳が聞こえる」なんて 誰も知らない優しさばかり 永遠にひらかぬ瞼をかすめゆく 「涙そうそう」は誰に届くか …

水葬

うつしよと隔てるように石を入れた さらばおとうと 波路遙かに 白波に花が散らばり消えてゆく 幾千の日々皆還らざる ごわごわの麻袋では痛かろうと シルクのスカーフこっそり巻いた 海底に桜は似合わないとわらう 帰る場所なき たまゆらの君 いつか誰かが言…

死んだ後ばけものをつくる仲間にしてよ わたしの骨を一本あげる たまらなく耳をふさいでも鳴り止まぬ潮騒 生まれる前からずっと 海べりの女の人のまぼろしを 見て見ぬふりして大人になるの 冷え切った手足ばかりが赤くなり 骨はいつまでも白白と光る 生きる…

まだ見ぬ青を切り取ったようなその瞳 二千年先も我は忘れず 堅実に地を蹴り舞うその背中から 人にも翼があることを知る 背中から翼が剥がれ落ちる時 僕らは星のひとつになれる 海水をしょっぱいと言う それだけ ただそれだけも言えないぼくら ほんとうの さ…

旅人に林檎の在処をたずねれば あにおとうととなりし日を指す 触れてはいけない星に触れたね あの日の罰をまだ覚えてる ありがとう私を覚えていてくれて 透明な日々に色がついた日 守りたかった守るべきだと 一人では何もできない子供が嫌で なにもかも終わ…

にんげんと寸分たがわぬ輪郭で眠った兄の犬歯をなぞる 春の雨がやさしくぼくらを包み込む 永遠にあにを 失った日に あの日見たとがった犬歯のまぼろしは 幼いあにの歌うアヴェ・マリア 境界のステンドグラスに反射して あにの瞳は青く輝く (青の祓魔師)